こんにちは!ヘッドコーチの仁です。
箱根駅伝4は、いよいよアンカー10区です。


雨中の大逆転
見えない敵を相手に3チームの思いはそれぞれ。日体大は「差をつけながら追う」。順大は「前に離されないで、後を離す」。日大は「離されないで、リードを守る」。まるで禅問答のような事態が、復路の同時スタートから起こっていた。鶴見中継所を出た順位は、日体大から3分1秒遅れて順大、6分28秒差で日大だった。通算タイムは、前項の末尾に記した通りのものである。アンカーは日体大 岩淵仁.岩手の定時制高校で働き、学びながら走ることに喜びを覚えた選手だった。順大は広島インターハイのヒーロー・宮広重夫、日大は松田和良。雨のなか、まず松田の足どりがおかしくなった。鶴見であった貯金は、ゴール手前7kmの八つ山橋で、なくなってしまった。


日体大の伴走車にしきりに常用車が近づき、後続の情報を伝えているらしい。ゴールまで数kmの地点で、岡野監督の目が輝いた。逆転に成功したようだ。しかし、岩淵はこのとき、「もう倒れそうだ」と思いながら必死に足を運び、「どこかで逆転したぞ。そんな声を聞いたような気もした」と、のちに語ってくれた。フラフラになった岩淵は、勝利の確信はなかったが、大きく手を広げてゴールした。


それから順大の到着を待つことになった。日体大の野呂進コーチや観衆が時計を見やる。3分4秒の間までに順大が来なければ、日体大の3連勝だ。やがて、「わ―っ」と歓声が上がった。順大のゴールはその23秒後だった。1・2位の差がわずか23秒.史上最高の僅差の勝負は、史上最高の大逆転から生まれたものだった。


(深沢 健志、平成16年、100~101ページ)引用・参考文献
深沢 健志、平成16年、「箱根駅伝」、
株式会社ベースボールマガジン社、
B・B MOOK327、スポーツシリーズNo.213